日本酒と健康

料理との相性

似たもの同士が味を引き立てる
日本酒の魅力の一つが、料理との相性の良さ。どんなタイプと合わせてもおいしく楽しめますが、組み合わせによってさらに料理が引き立ち、お酒の味わいも深まります。飲みたいお酒にぴったりの料理を導き出す「法則」、ご存知ですか。

冷旨系・中間系・温旨系

ワイン総合研究所の藤原正雄氏、渡邊正澄氏が確立した「清酒と料理のピタピタ理論」によると、味わいは「冷旨系(さっぱり系)」「中間系」「温旨系(こってり系)」の三つに分けることができ、お酒と料理は「よく似た味わいのもの同士が素直な相性を示す」ことがわかっています。

これは、「似たものは似たものをよく溶かす」という化学の基本原則から、食物の成分同士もなじみやすいものは口中でよく溶け合うから。組み合わせて楽しむことで、一段上のおいしさが生まれます。

純米・ぬる燗には温旨

例えば「おでん」は醤油・みりんの煮汁で作りますが、これはコクのある「温旨系料理」です。また、薬味の「和ねりがらし」も刺激味の強い「温旨系調味料」。つまり「おでん+和ねりがらし」の組み合わせは、理論では「温旨系料理」になります。次にお酒では、純米酒は主要成分に温旨系有機酸のコハク酸、乳酸、アミノ酸、脂質、苦味成分などを多く含む「温旨系」。似たもの同士は相性が良いことから、純米酒とおでんの相性は最高です。「温旨系」は温めることでおいしくなりますから、純米酒をぬる燗から人肌燗ほどに温めると、よりぴったりくるのです。大吟醸酒は主要成分にリンゴ酸など「冷旨系」の酸が他のタイプの酒より多く含まれ、逆にコハク酸や乳酸など「温旨系」の酸が少なくなっています。精白度が高いため脂質・灰分・ポリフェノールなどのコクのある成分が少なく、「冷旨系」のお酒といえます。ですから合わせる料理は同じ「冷旨系」で、さっぱりした「タコときゅうりの酢の物」などがよいのです。

調味料で相性向上

燗酒を飲むのに料理は冷旨系――そんな時は、調味料を工夫しましょう。例えば鶏肉は「冷旨系」寄りの「中間系」に分類されますが、たれをつけて赤とうがらしをかけると「温旨系」になり、ぬる燗の生酛・山廃純米や、長期熟成酒の吟醸タイプなどに合うようになります。これは、「温旨系調味料」を加えることで料理が「温旨系」に近づくため。ほかにもネギトロ巻はそのままで「中間系」ですが、醤油をかけると「温旨系」になりますし、サバの塩焼きも「中間系」から、醤油を足すとぬる燗に合うようになります。野菜類はそのままで「冷旨系」ですが、すき焼きなどの甘辛い味付けで燗酒にも合うようになります。料理と燗酒の相性を良くする「温旨系調味料」は他に、醤油、味噌、わさび、マスタード、粉山椒、醤油ニンニクなどがあります。

保存は「光」に注意

おいしい日本酒をもっと楽しむため、ぜひ覚えてもらいたいのが「保存法」。一番のポイントは「光」です。ある実験でお酒を無色のガラス瓶に入れ直射日光が当たる場所に置いたところ、数時間経つとお酒に色がつきました。酒中に含まれるアミノ酸やビタミンなどが紫外線によって化学変化し、色や香り、味も変化します。直射日光だけでなく、室内の殺菌灯や蛍光灯などからも紫外線はでますから、購入した日本酒は化粧箱に入れたままにしておくのが良いでしょう。化粧箱がなければ古新聞できっちりくるむだけでも大丈夫です。

次に気をつけたいのが保存温度。温度が高いと瓶内で対流がおきやすく、アミノ酸が変化して吟醸香が減少するおそれがあります。理想は冷蔵貯蔵ですが、家の中でも比較的涼しく、温度変化の少ないところなら問題ありません。

日本酒はそれだけでも十分においしいものですが、料理があればもっと楽しめること間違いなし。もっと楽しむコツを身につけてください。

資料提供:日本酒造組合中央会
記事は醸造産業新聞社発行『酒販ニュース』2007.8.1~2008.3.1に「50にして日本酒を知る」シリーズで掲載されたものです。