日本酒と健康

続 健康面 誤解してませんか

太るは誤解、糖尿病予防効果も
「日本酒の糖分が糖尿病につながる」「日本酒はカロリーが高い」という声を聞くことがありますが、これはまったくの誤解、間違いです。むしろ日本酒には、血糖値を下げるインスリン様の物質が含まれ、糖尿病予防効果があることが解明されています。また、日本酒だからカロリーが高いということもありません。

酒粕の成分が糖尿病に効果

最近注目されている「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」は、肥満に高血圧、高血糖、脂質代謝異常などの危険因子が重複して存在する状態のことで、個々の病気では予備軍の段階にもかかわらず動脈硬化が進行し、年数を経るごとに糖尿病や高脂血症などを発病するようになります。日本の糖尿病患者数は、近年急激に増加し、九割以上が属する「Ⅱ型糖尿病」は、インスリンの分泌量が少なくなったり、うまく働かなくなるため、血糖は筋肉まで行き渡らず、脂肪に取り込まれなくなるというもの。結果、血液中の血糖濃度は高いまま、いくら食べてもエネルギー源が確保できない状態になるのです。逆に、体内には脂肪を分解するホルモンが存在しますが、この合成と分解のバランスが取れているのが正常な状態です。

愛媛大学医学部の奥田拓道名誉教授は、酒粕中にある成分がインスリンに似た働きをすることを発見しています。実験で酒粕の抽出液を脂肪細胞に作用させたところ、酒粕の成分には、血糖を脂肪に取り込んで血糖値を下げる効果をもつ物質が含まれることがわかったのです。さらに日本酒にも同様の効果があると解明されています。また、脂肪細胞を分解するホルモンの働きを弱めてやればインスリンは働きやすくなるわけですが、酒粕中の成分はこの反対作用のホルモンの働きを弱め、脂肪の分解を抑制する力があることも、わかっています。

日本酒のカロリーは高い?


一方、日本酒のカロリーが高いというのは本当でしょうか。実はアルコールには、どの酒類も同じように1gにつき7キロカロリーあり、摂取カロリーは飲んだお酒に含まれるアルコール量に比例するのです。日本酒一合で193キロカロリー、ビール大瓶で247キロカロリー、ウイスキーシングルで67キロカロリー、ワイン一杯で92キロカロリーと日本酒だからカロリーが高いわけではありません。問題は、料理を含めた総摂取カロリーなのです。

でも、お酒を飲むと食欲が湧くこともまた事実。これは、すべてのアルコールに共通していえることで、お酒を飲むと、体内の血液量が増えて心臓の働きがリズミカルになり、全身の血行がよくなることがわかっています。その結果、胃液の分泌が盛んになり、食欲が増し、消化機能も高まるというわけです。

お酒と一緒に頂く料理は、エネルギーの低いものを選ぶこと。まず最初に揚げ物などを少し摂り、あとはさっぱりしたタンパク質食品や野菜を摂りましょう。少量の油分にはアルコール吸収速度を遅くする効果がありますから、食欲が増すペースも抑えられます。また、いくら野菜でも同じものばかり食べ続けるのは禁物。栄養が偏ります。

糖尿病予防には、なによりも一日に摂る食べ物その他の総摂取カロリーの抑制と適度な運動が必要です。すべての成人病は食源病、食習慣が原因といわれています。バランスの取れた食事と運動、そして正しい飲み方を心がけましょう。健康と身体のラインを気にするお客様に、ぜひ日本酒を奨めてください。

資料提供:日本酒造組合中央会
記事は醸造産業新聞社発行『酒販ニュース』2007.8.1~2008.3.1に「50にして日本酒を知る」シリーズで掲載されたものです。