日本酒と健康

適量飲酒の奨め

「善玉コレステロール」を増やす
様々な実験から、お酒をまったく飲まない人よりも、適量を飲む人のほうが、狭心症や心筋梗塞など動脈硬化性の心臓病にかかりにくく、長生きすることが明らかになっています。これは、日本だけでなく色々な国で同様に調査されていて、適量飲酒が心臓病によいということが、国際的に認められてきました。なかでも日本酒には、これまでに紹介した「ガン抑制」や「糖尿病予防」などからもわかるとおり、様々な健康効果があります。ここでは心臓の話を紹介します。

心臓病とコレステロール

狭心症や心筋梗塞といった心臓病は、心臓の動脈硬化という症状が進行することによって引き起こされます。動脈硬化とは、心臓の動脈壁が厚く硬くなることをいいますが、これによって血管に血の固まりができてつまったり、狭くなったり、痙攣が起きたりするのです。
この動脈硬化は、コレステロール値が高くなることによって促進されます。コレステロールとは、血液中の脂肪の一種で、体の細胞をつくったり、体調を整えたりするホルモンの材料となる物質です。「体によくないもの」というイメージをもつ人も多いかもしれませんが、人間の体にとっては大切なものなのです。

コレステロールには、いわゆる悪玉(LDLコレステロール)と、善玉(HDLコレステロール)の二種類があります。このうち悪玉は、全身にコレステロールを運ぶ働きをもちます。それと反対に善玉には、血管や組織に溜まったコレステロールを肝臓まで運び、処理するという働きがあります。

バランスが崩れて悪玉が増えすぎると動脈硬化が起こりやすくなるわけですが、逆に善玉のほうが増えれば、たとえ総コレステロール値が高くても、動脈硬化にはなりにくいのです。

毎日2合で善玉増える

一般に成人におけるコレステロール量の目安は200㎎/dlが「望ましい」とされていて、200~239㎎/dlでは「境界線」にあり、240㎎/dlでは「高すぎる」といわれます。また、そのうちの善玉コレステロール量が 35 ㎎/dl以下で「低すぎる」状態です。この善玉コレステロールが、日本酒に含まれる成分によって増えるということが、数々の研究から明らかになっています。

その一つに、(財)老年病研究所の渡辺孝所長が行った「HDLコレステロールに対する酒・タバコの影響」の研究があります(グラフ参照)。調査は、40~59歳の男性で「お酒を毎日二合以上飲む人」「二合未満飲む人」「時々飲む人」「飲まない人・止めた人」のタイプに分けて善玉コレステロール量を測定。これによれば、お酒を飲む人は飲まない人に比べ、善玉コレステロール値が高い傾向にあることがわかっています。さらに、なかでも「お酒を毎日二合以上飲む人」の善玉コレステロール量が最も高い値を示しました。

量がすぎてはいけませんが、日本酒で毎日二合程度なら、まずアルコール性の心筋症の心配はありません。おいしいお酒は、心と体の強い味方です。楽しく仲良くつき合っていきましょう。

資料提供:日本酒造組合中央会
記事は醸造産業新聞社発行『酒販ニュース』2007.8.1~2008.3.1に「50にして日本酒を知る」シリーズで掲載されたものです。